この8月から新たに「居宅介護」と「行動援護」の認可を受けてサービス提供を開始する。
僕のバックボーンは訪問介護員である。
介護の仕事の素晴らしさと個別支援の重要さを学ばせてもらえる、最高の教材だと今でも思っている。
ご自宅に行くので、家族とのやり取りも多く関係性を築きやすい。
その事業内容を簡単ではあるけど、スタッフと共有しておく。
目次
在宅介護に困ったら?いやいや困る前に利用しよう
居宅介護で出来ることは大きく分けて2つ。家事援助と身体介護である。
ご自宅に行ってご飯を作ったり掃除をしたりするのが家事援助。
ご自宅で入浴の手伝いをしたりオムツ交換をしたりするのが身体介護である。
障害分野で居宅介護は利用していない人も多い。
なぜならご本人がまだ若いと、お父さんお母さんや兄弟もまだまだ元気なので、「私たちが元気なうちは…」とおっしゃるケースが多い。
しかしそんなことを言ってても誰もが年老いて介護がしんどくなる。
だから僕はよく「家族が元気でも慣れておくために、緊急時に人に頼れるためにちょっとでも利用しとってください」と言ってきた。
当時はセールストークに聞こえたかもしれないけど、今でもその考えは変わらない。
家事援助あるある
「わしのメシのついでにばあさんのも作っといてくれー」
福祉サービスは基本的にご本人の生活を支えるためにある。
一部、ショートステイのような介護者のレスパイト目的のサービスもあるけど、基本はご本人のため。
この場合、福祉サービスを利用しているのはおじいさん。
そのおじいさんのためにヘルパーさんがご飯を作りに来ていて、一緒に住んでいるおばあさんのも”ついでに”作ってくれという。
これは制度上NGなのだ。
僕の時代は結構なぁなぁにやっていたけど、今はたぶん厳格なんだろうなー。
つまりこの場合は、おばあさんも介護認定を受けて、それぞれ福祉サービスを利用しましょうってなる。
ご利用者的には、「細かいこと言うなぁ〜」である。
まぁ財源のほとんどが公費なんだから仕方ないよね。
行動援護は専門的な外出支援サービス
一言でいうと行動援護は外出支援サービスである。
外出支援サービスというと移動支援の方がよく知られているので、行動援護の名前を出すと「はい?それなんですか?」と言われることもしばしば。
行動援護と移動支援の違いの一番はヘルパーの知識と経験である。
行動援護サービスに従事するためには一定の経験と研修を修了している必要があるのだ。
そして知的障害や精神障害のある方の外出を、知識と経験のあるヘルパーが専門的にサポートする。
ちなみにこれに関しても「私たちがまだまだ元気じゃけーええよ」っていう家庭も多い。
そういう家庭に限って、必要な福祉サービスにアクセスできていないことが僕の経験上多い。
行動援護の利用対象者
- ・障害支援区分3以上
- ・認定調査の行動関連項目10点以上
この2つが利用する人の要件。
障害支援区分は、ご本人の必要な支援の量を数値化したものである。
介護保険でいう”要介護度”と同じようなものだと思ってくれたらいい。
もう1つの行動関連項目10点以上ってのが意味がわからないと思う。
これは前述した障害支援区分を判定するための調査の中にある、”行動関連”という調査項目。
ここの合計点数が10点を超え、且つ障害支援区分3以上の人が行動援護の対象者である。
ちなみに第一章に書いた居宅介護の利用対象者は障害支援区分1以上の人が対象。
訪問介護サービスは未経験では難しい?
訪問介護は基本1:1でのサービス提供。
利用するご本人のことだけを考えればいいという一方、他のヘルパーのやってることが見えなかったりやり方が違っていても、気付きにくい側面も持っている。
しかし今はITのおかげでテキストや画像だけでなく、動画だって簡単に共有できる。
もし間違っていたり不安があったとしても、先輩から指導を受けることも容易で情報共有も簡単だ。
居宅介護は介護職員初任者研修を修了してさえいれば仕事に就ける。
特に施設系でしか働いたことがない人にはある意味刺激的で、この仕事の喜びを充分に感じられるはずだ。
もし興味がある人は是非挑戦してみてほしい。
失敗しても大丈夫、たくさんのヘルパーを見てきたご家族が温かく成長を見守ってくれる。
僕もその一人だ。
僕の失敗談
居宅介護で家の中に入り、あれやこれややっていると仲良くなって特別な関係性になってくる。
ご利用者がお菓子やご飯をくれることもしょっちゅうだった。
そんなある日お金持ちそうなおじいさんが1万円を出してきた。
「ほんまに感謝しとるんだからもらってくれーぃ」と。
最初は断ったけど(ほんとだよ)、3度目くらいにもらってしまった。
「少しくらい、ま、いいか」と思っていたら、1か月後くらいに会社に呼び出されバレていた。
「田中さんに(何かの)サービスを断られた!お金をあげたのに」と会社に電話があったらしい。
もう何を断ったのか覚えてないけど、居宅介護の範囲外のことだったと思う。
それから現金はキッパリと断ることにした。
お菓子やご飯は相変わらずもらい続けた。
終わりに
冒頭にも書いた通り、訪問介護は介護職の魅力が詰まった素晴らしい事業である。
色々な職種を経験した人が最終的に行き着く事業でもあると思っている。
そんな”ヘルパーさん”をみんな一度は体験してみてほしい。
ただ、田中ヘルパーのようにお金はもらわないほうがいい。
その時は僕が呼び出すことになるかもしれない…
「〇〇さん、利用者さんからお金もらったんだって?それはよくないよ、でも気持ちはわかるよ。僕も昔ね…」