社長ブログ

人を増やしても忙しさは変わらない?

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「介護施設長&リーダーの教科書」という本の中にとても興味深い話があった。

その内容は経験があり、気付いていたようで気付いていなかった。

介護現場では「利用者さんに喜んでほしい!」という善意が「基準」を押し上げ人員増になり、人件費や残業費が膨らむ。

一方で報酬は変わらない。

それどころか自立が進み介護度が下がれば報酬単価は下がる。

このブログではその構造的矛盾を書いた上で、じゃあどうすればいいのか?について書く。

人を増やしても忙しさは変わらない

その理由は簡単に言うと「基準が上がる」からだ。

「介護施設長とリーダーの教科書」に書いてあった事例で。

例えば10人で運営している施設。

そこでは「もう1人いてくれたら食後のコーヒータイムや外出の頻度が増やせるのに…」とスタッフ間で話している。

そこで11人目を入れると、コーヒータイムや外出支援対応ができて「めでたしめでたし」…とはならない。

なぜかと言うと、11人目が入ると「もう1人いたら個別の外出ニーズに対応できる」などの追加対応が始まるからだ、と言う。

つまり終わりのない「サービス向上が始まる」のだ。

(本の事例はここまで)

介護サービスは抽象的でゴール定義が曖昧だ。

「利用者さんのため」という「正論」が損益分岐点を超えても正当化する。

これは現場の怠慢ではなく、「制度の構造的な問題」と「経営者の説明責任」が含まれていると思う。

制度の構造的な問題

現在の制度設計では、自立支援が進み要介護度や障害支援区分が下がると収入も下がる。

障害支援区分6から5に下がれば、事業によっては月10万円以上の報酬減だ。

株式会社障がい者ライフサポート【広島市】
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これは昔から問題視されていて一部、自立度が上がれば報酬が増える「評価加算」がある。

ただ、介護給付系だと基礎報酬ダウンの方がインパクトが強い。

加えて、仮に自立度が上がると理屈上人員は減らせる。

しかし日本の雇用慣行では解雇はできず、人材は減らせない。

固定費は残り、売上だけ下がる。

厚生労働省は報酬改定で評価加算を拡充する方向ではある。

しかしこれまた別の慣行で、拡充とセットで記録物が増える傾向があり、生産性とは無縁の事務管理費が増えるのだ。

経営者の説明責任

サービス向上と経営の線引きを示すことが必要だと思う。

つまり「損益分岐点」を見せることである。

例えばグループホームは住居を提供するサービス。

当社は日中サービス支援型なので1つの住居で7〜10人くらい在籍、土日も2人は日勤で出ている。

現状、土日の余暇活動は、【2人、日によっては2人+@】の人員で、「出来る範囲の活動」となっている。

ここで「個別支援を毎週やる」となると「もう1人ほしい」となる。

その1人は調理員かもしれないし、清掃員かもしれない。

しかし損益分岐点は、

  • ・【土日の日勤は2人、その月のシフトが許すなら2人+@】
  • ・この中で最高のサービスを目指そう

これがサービス向上と経営の線引きを示すという意味である。

(上記の例えはあくまで例である)

これはどの事業でも言えると思う。

実体験とこの問題の対応方法

人員をプラス1しても現場の「足りない」は消えない、それは基準が上がるから。というのがここまでの話だ。

うちの会社はどの事業所も人員配置体制で加算を取得している。

それは加算やサービス向上のためだけでなく、

  • ・有給休暇の取りやすさ
  • ・研修の受けやすさ
  • ・急な休みや退職への対応
  • ・他事業所へのヘルプ対応

こんな理由から【基準+@】で配置し、余裕を作ることを心掛けている。

時々思うように採用できて【基準+@】を配置できることもある。

しかしその時でも現場から「人は充足している」と聞くのは稀だった。

僕は「2:6:2の法則」が働いているのだと決めつけていた。

ただ、今回取り上げた「そもそもの基準が上がる」現象も起きていたなぁと思い返した。

もちろん問題は単一ではない。

人が多いと動きが鈍る人が出るのも事実。

「基準が上がる」のも事実。

人が増えると人材育成や管理コストが上がるのも事実。

そういったことを踏まえて、

  • ・現場にもこれらすべてを丁寧に説明をして
  • ・会社として最善の道に進みたいのだ

と、現場とともに議論し、全体で認識を深める必要があると感じた。

研修議題としては良い内容なので、優先順位が回ってくれば取り上げたい。

終わりに

善意で基準が上がり、成果で収入が下がる。

経営の線引き=損益分岐点を共有して、スタッフの処遇を守り、理念と継続性を両立させる。

たぶん昔なら管理者にだけ話し、「ぽ〜ん」と結果を投げていた。

多く人はそれではダメなのだと知った。

(論理が成立していればいい、感情が付いてこないのはスタッフ側の問題、とマジで思っていた!)

それが組織マネジメントであり、共感者を増やすことにも繋がるのだと知った。

「障害者がありがとうと言われる社会を作る」という理念と、「損益分岐点」はよく相反する。

だから経営者として説明責任は果たしていかなければならないんだね。

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